それは家族で旅行に向かう途中、高速道路の追い越し車線を走っていた時の出来事でした。快調に速度を上げていた愛車の挙動が、突然おかしくなりました。アクセルを踏み込んでもエンジンが苦しそうな音を立てるだけで加速せず、車体がガタガタと震え始めたのです。慌てて視線をメーターパネルに落とすと、そこには今まで見たこともない光景がありました。エンジンの形をした黄色いマークが、一定の間隔で激しく点滅していたのです。点灯ではなく「点滅」しているという事実に、私は言葉にできない恐怖を感じました。車が動かないわけではありませんでしたが、このまま走り続ければ爆発でもするのではないかという妄想に駆られるほど、異様な光景でした。 私はハザードランプを点滅させながら、慎重に路肩へ車を寄せました。車を停めた瞬間、エンジンの振動はさらに激しくなり、ついにはプスンという音と共に止まってしまいました。再始動を試みましたが、パネル内のエンジンマークは消えることなく、セルモーターだけが虚しく回るだけで車は二度と動きませんでした。高速道路という逃げ場のない場所で、警告灯のマークに怯えながら過ごす時間は、一分が一時間にも感じられるほど長く、心細いものでした。家族の不安そうな顔を見るのが辛く、日頃のメンテナンスを怠っていた自分を心から後悔しました。 後にディーラーで診断を受けた結果、原因は点火プラグの不具合による「失火」でした。エンジンチェックランプの点滅は、単なる異常ではなく、触媒を損傷する恐れがあるほどの緊急事態を示していたのです。もしあの時、無理をして次のサービスエリアまで走り続けていれば、エンジンの基幹部品を壊し、数十万円の修理代がかかっていたと言われました。車が動かないという結果は同じでも、警告灯のサインを無視して無理をさせるか、すぐに判断を下すかで、その後の運命は大きく分かれることを学びました。 あの時、パネルの中で瞬いていた黄色いエンジンのマークは、車が私に送った最後のアドバイスだったのだと思います。「これ以上は危ない、止まってくれ」という必死の訴えを、私は辛うじて受け取ることができました。旅行は中止になりましたが、家族に怪我がなかったことが最大の幸いです。この出来事以来、私は警告灯の意味を徹底的に調べ、少しでも違和感があればすぐに点検に出すようになりました。車が動かないというトラブルは、決して他人事ではありません。メーターの中に灯る小さなマーク一つひとつに、作り手の英知と、車自身の意志が込められているのだと、今では強く実感しています。