心当たりのある数字を全て試しても、ダイヤル式の鍵は、うんともすんとも言わない。そんな絶望的な状況に追い込まれた時、残された最終手段が、全ての番号の組み合わせを、力ずくで試し尽くす「総当たり攻撃」です。一見、途方もなく、非効率な作業に思えるかもしれません。しかし、この方法は、鍵や本体を一切傷つけることなく、そして、特別な道具も技術も必要とせずに、時間をかければ「必ず」開けることができる、最も確実な自力解錠の方法なのです。この総当たりが、現実的な選択肢となり得るかどうかは、そのダイヤルの「桁数」にかかっています。例えば、多くのスーツケースや南京錠で採用されている「三桁」のダイヤルロックの場合、組み合わせは「000」から「999」までの、わずか千通りです。集中して行えば、一つの番号を試すのに二、三秒もかかりません。つまり、最大でも、千通り×三秒=三千秒、約五十分もあれば、必ず正解の番号にたどり着くことができる計算になります。テレビでも見ながら、あるいは音楽でも聴きながら、無心でダイヤルを回し続ければ、思ったよりも早く、その時は訪れるでしょう。一方、これが「四桁」のダイヤルになると、組み合わせは一万通りに跳ね上がります。同じ計算でいくと、最大で三万秒、約八時間以上かかる可能性があり、もはや、気軽な挑戦とは言えなくなります。しかし、時間に制約がなく、どうしても壊したくない、という強い思いがあるのなら、挑戦してみる価値はあります。この地道な作業を成功させるためのコツは、「規則性」と「記録」です。必ず「0000」「0001」「0002」というように、順番に試していくこと。そして、疲れて中断する際には、どこまで試したのかを、必ずメモに残しておくことです。これを怠ると、同じ範囲を何度も試すことになり、永遠に終わりが見えなくなってしまいます。