自動車の防犯技術が向上する中で、もはや標準装備となった感のあるイモビライザーシステムですが、このシステムが搭載されていることが合鍵作成の費用を複雑にしています。イモビライザー搭載車の鍵作成には、物理的なカッティング技術に加えて、車両のコンピュータにアクセスするためのIT技術が必要不可欠だからです。ここでは、具体的な車種やシチュエーションを想定した予算の事例をいくつか紹介し、なぜその金額になるのかという背景を掘り下げてみましょう。例えば、十年前の国産コンパクトカー。鍵を差し込んで回すタイプですが、イモビライザーが入っています。この場合、ディーラーで作ると部品代と工賃で約二万円、鍵の専門店であれば一万五千円前後というのが一つの目安です。 これがトヨタのプリウスやアルファードといった、普及しているがセキュリティも強固なスマートキー搭載車になると、予算は一気に跳ね上がります。ディーラーでの作成費用は、本体・キー・登録料を合わせて三万五千円から四万五千円程度です。もしネットオークションなどで安く手に入れた中古のスマートキーを持ち込んで登録だけしてもらおうとしても、最近のディーラーでは防犯上の理由やトラブル防止のために持ち込み登録を断るケースが増えています。また、中古のスマートキーは一度特定の車両に登録されると、初期化という特殊な作業を行わない限り他の車両には登録できない仕組みになっているため、結局は専門業者に高い初期化費用を払うことになり、トータルでは新品を作るのと変わらない値段になってしまうことも珍しくありません。 さらに高額になる事例が、欧州車などの輸入車です。ベンツやBMW、フォルムスワーゲンなどの合鍵作成は、日本のディーラーに依頼しても、本国のメーカーサーバーからデータを取り寄せたり、ドイツから鍵を空輸したりする必要があるため、納期に数週間、費用に五万円から八万円、モデルによっては十万円以上かかることがあります。鍵の専門店でも輸入車に対応できる業者は限られており、最新の機材を使いこなすための技術料として、ディーラーと同等かそれ以上の見積もりが出ることもあります。輸入車の鍵は情報の暗号化が非常に複雑で、作成作業そのものがサイバーセキュリティの攻防のような側面を持っているため、この金額は技術への正当な対価と言わざるを得ません。 なぜこれほどの予算が必要になるのか。それは、合鍵作成という作業が、車両の安全を担保する「秘密の門扉」を正しく、かつ安全に複製する作業だからです。安価な非正規品を使って登録を行うと、後で車両のメインコンピュータがエラーを起こし、修理に数十万円かかるという二次被害も報告されています。合鍵作成の値段を見る際、私たちは「ただの鍵」ではなく「車を安全に動かすためのライセンス」を買っていると考えるべきです。適正な価格を支払って正規の手順で作成することは、将来的な車両トラブルを防ぎ、売却時の査定評価を守ることにも繋がります。イモビライザー搭載車の合鍵作成は、計画的な出費として予算に組み込んでおくべき、現代のカーライフに欠かせないメンテナンス項目の一つなのです。
イモビライザー搭載車の合鍵作成に必要な予算の事例