番号不明や鍵の紛失により、金庫の開錠をプロに依頼せざるを得なくなった時、最も気になるのがその費用です。金庫の開錠は、一般的な鍵のトラブルとは一線を画す、高度な専門作業であり、その費用も決して安価ではありません。料金は、金庫の種類や状況によって大きく変動するため、その内訳と相場を正しく理解しておくことが、業者選びや見積もりの妥当性を判断する上で重要です。費用を決定する最も大きな要因は、金庫の「防犯性能(グレード)」です。家庭用の手提げ金庫や、耐火性能のみを主眼とした小型金庫であれば、構造が比較的シンプルなため、一万五千円から三万円程度が相場となります。しかし、企業などで使われる、バールでのこじ開けやドリルによる破壊に耐えるよう設計された「防盗金庫」となると、話は全く変わってきます。特に、「TS-15(工具による破壊に15分耐える)」や「TL-30(30分耐える)」といった規格を持つ金庫は、内部に特殊合金の鋼板や、リロッキング装置などのトラップが仕掛けられているため、解錠の難易度は飛躍的に上がります。これらの金庫の開錠には、特殊な技術や工具が必要となり、費用は五万円から十数万円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。金庫のサイズが大きくなればなるほど、また、防盗グレードが高くなればなるほど、料金も高額になる傾向があります。次に、開錠方法によっても費用は変わります。金庫を傷つけずに開ける「非破壊開錠」と、ドリルなどで穴を開ける「破壊開錠」の二種類がありますが、当然ながら、高度な技術を要する非破壊開錠の方が、料金は高めに設定されています。しかし、破壊開錠を選ぶと、金庫は二度と使えなくなってしまうため、解錠後のことを考えれば、多少高くても非破壊開錠を選ぶ価値は十分にあります。これらの基本料金に加え、業者によっては出張費や深夜・早朝の割増料金が別途かかる場合があります。電話で見積もりを依頼する際には、これらの追加料金も含めた「総額」でいくらになるのかを、必ず事前に確認することが重要です。